“人生の特性を決定するのは、日常の小さな事柄であって、偉大な行動ではない。”
カール・ヒルティ-(法学者)
他人の人生、他人の成功に目を向けると、どうしても〈大きなもの〉ばかりが目につきます。
しかし、そうした偉大な行動というのはあくまで結果に過ぎません。
その〈偉大な行動〉は日々の小さな努力、そして習慣の積み重ねからできているのです。
習慣によって、いわば第二の天性がつくられる
キケロ(共和制ローマ期の政治家)
身につけたい習慣はありますか?それはどんな習慣ですか?
早起き、勉強、運動、片付け…。いろいろありますね。
こうした行動だけではく、「ポジィティブ・シンキング」や「論理的思考」のように「〇〇シンキング・〇〇思考」と呼ばれるものも「思考習慣」という習慣の一種です。
あらゆる行動、スキルや思考などは〈身につけてこそナンボ〉です。「知っているだけ」や「三日坊主」では意味がありません。
だからこそ「習慣化」という言葉にも注目がある待っているのでしょう。「習慣化」に関する書籍もたくさん出版されています。
習慣とは何か
習慣とは何か、あらためて考えてみましょう。
① 長い間繰り返し行われていて,そうすることが決まりのようになっている事柄。また,繰り返し行うこと。
② ならわし。しきたり。風習。慣習。
③ 学習により後天的に獲得され,繰り返し行われた結果,比較的固定化するに至った反応様式。
みなさんが「習慣化したい!」という文脈で語るときの「習慣」は③ですね。
当たり前のことですが、まず習慣とは〈繰り返し行われた〉結果なのです。つまり続けるということこ。
そして、繰り返し行ったことで固定化する、つまり〈「やったり」「やらなかったり」のブレが少なくなる状態〉になって「習慣」と呼べることができるのです。
人の行動の9割は無意識
わたしたちの〈行動〉について、考えてみましょう。
人間の日常的な行動のうち、90%以上が〈無意識〉のうちに行われている、とされています。(Bargh & Chartlandのレビュー論文より)
意識と無意識の関係は、よく氷山に例えられます。
氷山は、海に浮かんでいる部分、すなわち目に見える部分は全体の11%です。残りの89%はわたしたちから見えない海の下にあります
もっと身近な無意識の行動といえば「呼吸」でしょうか。深呼吸やスポーツなどの場面を除き、日常的に呼吸を意識することはありません。
自転車の漕ぎ方もそうですね。左右の足の動き方を意識している人はいないでしょう。また、例えば急に人が飛び出してきた場合、「ブレーキをかけなきゃ!」と考える前に、無意識にブレーキをかけています。
無意識の行動には、呼吸など生命を維持する本能的な行動や、本人の性格や価値観・経験が反映された行動などがあります。
習慣も、この無意識の行動に含まれます。完全に習慣化された行動は意識しなくても自然と行えるようになっているのです。
習慣の力は大きい
行動のなかには意識して行うこともあります。
「お昼はあれを食べよう」「今日はこの服を着よう」「教授に〇〇について質問をしよう」
こうした選択や判断は意識的に行なっているものですね。実はわたしたちの日常の行動で10%以下しかないんです。
しかも、意識的な行動は無意識に左右されます。
ダイエットの習慣がある人ならランチの選択肢は、ヘルシーなものが前提となるでしょう
節約の習慣のあるなしで、どの服を買うかという選択も変わるかもしれません。
ポジティブな思考習慣がある人は前向きな選択をするでしょう。
無意識な行動は90%を占める。残りの10%しかない意識的な行動も、無意識の影響を受けている。
「習慣化」が大事だとよくいわれるのは、意識より無意識のほうが圧倒的に強いからなのです。

「習慣」は無意識の領域の行動です。つまりコントロールできません。
ですから「〇〇を習慣化しよう」という目標は望ましいとはいえません。「〇〇が習慣になるまで繰り返そう」と言い直した方が適切です。
目標は〈自分のコントロール可能な行動〉に焦点をあてるのが望ましいからです。
「言い換えたところで、結局、継続するのが難しいんだよなぁ」
継続することは、確かに難しい。簡単であれば習慣化の本もダイエット本も、こんなに流行ったりしないですからね。
大事なのは目標を言い直すことではありません。
無意識の行動である習慣を身につけるには、〈意識的な行動〉を繰り返すことだ、と理解しなければなりません。
習慣化とはトーレニングである
「あることについて,それがうまくできるように練習を継続的に行わせること
これを「訓練」と言います。習慣化までの道のりはまさにトレーニング。
ある行動が無意識でできるくらい練習を重ねること。そう考えてみると、目標までのコツについて学べることがありそうです。
簡単なことから始める
「毎朝5時に起きて勉強をする」という習慣を目標にしたとき、あなたは明日の朝まず何時に起きますか?
まず、5時に起きてみる。そして5時起きが続くよう努力する。そう考える人も多いのではないでしょうか?
トレーニングという視点で見てみましょう。
例えばピアノ。経験がない人は鍵盤を見ずに弾くことさえ難しい。しかし練習を重れば「これがドで、これがミで…」なんて1音ごとに考えなくても弾けるようになります。無意識の領域です。
ピアノの素人がリストの名曲であり何曲「ラ・カンパネラ」を弾くことを目標とした場合、いきなりその曲の楽譜をなぞるのは適切なトレーニングでしょうか?
「きらきら星」を片手で弾くことから始めたほうがいい人や、「ドレミファソラシド」を正しい指使いで弾くことから始める人だっているでしょう。
S・ガイズ氏によるベストセラー『小さな習慣』で書かれている話があります。
「鼻を触ってください」と言われて、鼻を触れない人はほとんどいません。なぜなら、自分の鼻を触るという行為は簡単すぎて、挫折するのが難しいからです。
ガイズ氏は習慣化を成功させる秘けつは「小さすぎる目標を立てる」ことだと述べています。
挫折しようもないくらい、小さな目標。そして成功体験を積み重ねて行くことが大事なのです。
例えばスクワットなら「毎日1回」から。
おかしな目標でしょうか? それを笑えるのは「毎日1回以上スクワットをする習慣」を身につけている人だけ。わたしはそう思います。
「できない」も想定しておく
習慣化というと「決めたことの〈達成〉を積み重ねていく」というイメージを持っている人がいます。
もちろん、毎日「できた!」を実感できるのが望ましい。だからこそ「小さすぎる目標」という考え方があります。
しかし、継続を目標にするからこそ、何が起こるかわかりません。例えば体調不良。体調はメンタルや思考力に影響しますので、どんなことも上手くできなくても不思議ではありません。
「1日10ページ読書をするだったが、1ページしか読めなかった」
「先週は1週間で5日やれたのに、今週は3日しかできなかった」
「できなかった」は、習慣化の失敗ではありません。できなかった日があるだけ。もう一度トライするか、目標を見直せばいいのです。
“失敗は単に前へ進むための合図です”
ヘレン・ケラー
「すごろく」というゲームがあります。サイコロを回して、マスの上でコマを進めていく。
止まったマスにいろんな指示が書いてありますね。「1回休み」だとか「3マス戻る」など。1回休んでも、3マス戻ってもそれで「負け」が決まるわけではないのです。ゲームを諦める必要はありません。
“失敗は回り道。行き止まりではない”
ジグ・ジグラー(演家、作家))
「なりたい」という気持を大切に
習慣化は決して簡単ではありません。
『30日で人生を変える「続ける」習慣』(著:古川武士)という本の中で、習慣化に必要な期間の目安が紹介されています。
〈レベル1〉行動習慣(勉強・日記・片づけなど):1か月
〈レベル2〉 身体習慣(ダイエット・運動・早起き・禁煙など):3か月
〈レベル3〉思考習慣(論理的思考力・発想力・ストレス発散思考など):6か月
時間がかかり、難しいくても、それ以上にメリットがあります。
“習慣は太い縄のようなものだ。毎日1本ずつ糸を撚り続けると、やがてそれは断ち切れないほどのものになる”
ホーレス・マン(米国の教育改革者)
継続するのは難しいかもしれません。でも、まず「やってみる」。
1回だけなら難しいことではないのです。(1回だけなら難しくない、ということから始めればよいのです)
やってみないのはもったいない。
“今日始めなかったことが、明日終わることはない”
ゲーテ(劇作家)
始めてみれば、わかることがあります。難しければ、より簡単な目標にすればいい。興味が他に映ったら、それを新たな目標にすればいい。いくらでも調整や選考は可能なのです。
大事なのは「こんな自分になりたい」「〇〇ができるようになりたい」という、あたなの気持ちです。
その気持ちを、まずは行動にしてみませんか?
“心が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。”
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[参考・関連書籍]
とってもかわいい装丁の『小さな習慣』ですが、中身は実にしっかりとした内容の骨太な自己啓発本です。
科学的に実証されたデータを引用し、脳の仕組みからなぜ人は「はじめたことを続けられないのか」を説明し、「小さな習慣」こそが「大きな変化」をもたらすことを説く、潜在意識の法則の本質を解明する本です。(紹介文より)
習慣化コンサルタントであり、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社の代表である古川武士氏による著書です。ワークブック形式で、約3ヶ月分の手帳のように書き込めますので、習慣化の実践で活用できます。
世界的にベストセラーとなった本です。習慣で人生を変えるための「100のコツ」が解説されています。前向きな言葉多く、習慣化のモチベーションにも役立つ1冊です。