英雄とは、自分のできることをした人だ。
ところが、凡人はそのできることをしないで、できもしないことを望んでばかりいる
ロマン・ロラン/作家
「海賊王に俺はなる!」というセリフ。
漫画は読んだことなくても、知っているという人は多いのではないでしょうか。
『ONE PIECE(ワンピース)』という少年漫画の主人公・ルフィのセリフです。
夢を宣言するということは、大変な勇気がいることです。夢を語るって素晴らしい。
そして、夢に近づくために努力すること、これはさらに尊い行為だと思います。
「海賊王になる!」と公言し、その信念を曲げない主人公に多くの人が惹かれるのも、そうした一面があるのかもしれません。
夢はそう簡単に叶いません。
行動しないまま、夢を夢のまま置いていると、いずれ「口先だけの人」と思われてしまうかもしれません。
けれど、叶わなくとも小さな努力を積み重ねている人は「口先だけの人」という評価にはならないはずです。
今はゴールから遠くても、その人が一歩づつ確かに歩んできた「道」があるからです。
偉大な記録を持つ元メジャーリーガー、イチローは言いました。
確かな一歩の積み重ねでしか、遠くへは行けない。
一歩。それはとても小さい。しかしそれを繰り返すということが意外と難しい。
冒頭のロマン・ロランの言葉を借りるなら、歩み続けられるひとこと「英雄」なのです。凡人は歩きもせずに夢や理想を語るだけ。
ところで、ロランの定義する「英雄」とはどんな人なのでしょうか。
ロマン・ロランは、フランスの作家です。世界を開いてみせるような大文豪や大思想家ではないかもしれません。
しかし、生きることに真摯で誠実でした。それゆえ人生に悩むすべての人の友となり、生涯の師と仰ぐ人も少なくありません。日本人とも交流がありました。
彼は著書『ベートーヴェンの生涯』の序文で,《英雄》を次のように定義しています。
私は思想や力によって勝利した人たちを,英雄とは呼ばない。私が英雄と呼ぶのは,心によって偉大であった人たちだけである。
戦争に勝利したとか、自分の思想を広げたとか、いわゆる「成功した人」が英雄ではない。心が偉大である人が英雄であると述べているのです。同じ序文にはこのような記載もあります。
私たちにとって,成功はたいして重要なことではない。
ではロランにとって大事であった、「偉大である」とはどのようなことなのでしょうか。
別の著書『ジャン・クリストフ』の中に次のように書かれています。
成功は彼〔クリストフ〕の目的ではなかった...彼の目的は、信仰であった。
ここでいう「信仰」とは宗教的な物ではないように思います。
わたしは、「強い信念」のようなものだと解釈しています。
つまり、ロランは「自分の強い信念を持ち、夢に向かって、一歩一歩小さな努力を積み重ねられる人」こそ英雄であると言いたいのではないでしょうか。
「海賊王に俺はなる!」と言ったルフィと近いものを感じますね。
英雄といえばファンタジーゲーム、いわゆるRPG(ロールプレイングゲーム)の主人公である「勇者」も思い浮かびます。ゲームをあまりやらない人にはピンとこないかもしれませんが。
ストーリーの冒頭で世界が悪魔に襲われ、主人公である勇者は旅にでます。王様から「魔王を倒して、世界を救ってくれ!」と依頼されるケースもあります。
勇者は「世界を救う」という目的をもって旅に出るのです。我々の日常ではここまで大きな目標を掲げることはなかなかありませんよね。
でも、旅に出たばかりの勇者はレベル1なんです。ものすごく弱いんです。そんなに弱くてよく「世界を救おう」と思ったな!?とツッコミたくなるほどです。
勇者は自分にレベルに見合う敵や〈自分よりちょっと強い敵〉をたくさん倒して、経験値を稼いで、レベルアップします。そして強い武器を揃え、仲間を増やし、ようやく最後にラスボスである魔王を倒してハッピーエンド。
世界を救う英雄だって、いきなりラスボスは倒さないのです。
夢が大きいほど、自分の小ささが感じられるときもあるでしょう。
しかしロランやイチロー選手のいうように「できること」を積み重ねるしか、道はないのです。
レベル1ならレベル1の戦い方があります。大事なのはレベル3や5を目指すこと。その積み重ねが、いつか「世界を救う」に代わる、あなた自身の夢を掴むことにつながるのです。
今、あなたができる行動はなんですか?